遊猟<いうれふ>

たづなさばきも あざやかに
まゆみのつるを ならしては
きらのすそ なびかすひとら
はてしなきのに ししをおひ
るいじつ あそびたまふなり

うまいななける そのこゑに
ちからみつるを おぼえてか
のをかくる あてなるひとら
おひたるさつや さぐらせり
ほむらのごとき なつくさの
のにいであそぶ ししがみは
にはかに たけびたまふなり

うちつづく くぬちのみだれ
まどひ さかまく ときのせに
などか いくさの せまらざらむ
めくるめく そのあらなみを
てにつるぎもて こゆるべし

あさがりに またゆふがりに
さわくむらとり たつはらを
ふますひとらは たけりつつ
まゆみのつるを ならしたり
すずしきおとよ じやをはらひ
らんせくぐらむ ますらをの
むかふあしたに なりわたれ

そのくさふかき のにみつる
のろしににたる かぎろひや
くにをおふべき ますらをの
さつやをゆきに さぐるあり
ふますひとらは たけりつつ
かなたにあらし みえかくれする
のにうまなめて かけたまふ

春宴

うたひさわぎて ふねのうへ
ちかづくきしに そでをふり
のぼるながれの さかまくを
ぼんぼりてらす そのもとで
るりのさかづき ほすひとら

さよふけて つきいでたるを
ほのかにおほふ くもありて
のずゑに すみをひく やまも
かはらにゆるる わかくさも
はうきをおびて やはらかく
らゐのむかふに あるごとし
のぼるながれは はやくして

あわだちてゆく さほがはの
をどるをとめを しのはする
やなぎにもゆる あさみどり
ぎんねずの もやのむかふに
はうきをおびて やはらかし

いまや あけむとするそらに
まばゆくはゆる あさみどり
はうきのなかを うちのぼる
はるのうたげの ふねのうへ
るりのさかづき かはすのは
へいけいの そのうらがはで
とはにまします くにつかみ

なごりのゆきの まふなかに
りうりやうたるは ふえのおと
にしきをまとひ くみかはす
けふのいのちの よろこびは
るりのさかづき あふれいで
かはのほとりの はるをことほぐ
もえわたれ そのあさみどり

 

「遊猟<いうれふ>」は万葉集4(巻一)、「春宴」は万葉集1433(巻八)大伴坂上郎女を御題にしています。 (各行頭の仮名を繋げると御題になります。)

題歌等について詳しくは、宜しければ補記を御覧下さい。

尚、補記中の題歌の表記、解釈などは、特にお断りしない限り、角川文庫「万葉集『新編国歌大観』準拠版」伊藤博校注 の表記および脚注を参考にしております。

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