2010年12月の御題について

「鶴占<たづうら>」の御題は万葉集1791(巻九)遣唐使の親母
「旅人の宿りせむ野に霜降らば吾が子羽ぐくめ天の鶴群」

その一つ前に収録されている同じ作者による長歌の反歌です。

遠い異国へ海を越えて危険な旅に出かけて行く独り子の無事を願い、「竹玉(たかたま)を繋(しじ)に貫(ぬ)き垂れ」「斎瓮(いはひへ)に木綿(ゆふ)取り垂(し)でて」一心に神祭りする長歌の内容から、題歌中の作者の鶴への思いは、単なる空想や願望の次元ではないのが分かります。詠われているのは、鳥を神と信じ、鳥占でその飛ぶ姿や鳴き声を窺うことによって行く末の吉凶までも知ろうとした、古人の切実な祈り……。

このうたはそんなことを感じながら書きました。

「夜訪花」の御題は山頭火「やつと咲いて白い花だつた」

白い花があると、つい目が行きます。この句の「白い花」は何か、ぱっと調べた範囲では分からなかったのですが、個人的な好みでは、この季節なら山茶花でしょうか。そんな手前勝手な共感から、このうたを書きました。きょうび、こんな暇な人は居なさそうですが……。