2010年11月のあはひうた

      万葉集1646(巻八)小治田東麻呂
「ぬばたまの今夜(こよひ)の雪にいざ濡れな明けむ朝に消なば惜しけむ」より

御題等について、詳しくは補記をご覧ください。

雪遊び

  塗り下駄履いて使ひした
  晩に小雪が降りまして
  莨(たばこ)屋さんに葉茶屋さん
  町中淡く雪化粧
  軒の灯りも揺れ滲む

  今宵初雪 夢の雪
  夜が明けたなら消え渡る
  日昇る前のひとときの
  軒の灯りの滲む夜
  雪遊びして明かす子は
  来てこの指に止まりやんせ
  滲む灯りのそのもとに

  いざ降り初めの雪の上
  草履(ざうり)の跡をつけ遊び
  濡れた袂(たもと)を振り歌へ
  霊鬼飛び交ふ夜の町を
  なべて笑ひで祓はうよ

  朝が来たなら子供とて
  今日の続きの運命(さだめ)あり
  向かひ同士に暮らしつつ
  会ふは稀なる子らもゐて
  仕事合間の手習ひの
  ための草紙の古き歌
  滲ませて里想ふやも

  今日の続きの明日までも
  なべて笑ひで清め行き
  晩の灯りを滲ませる
  愛しき小雪と戯れん
  仕事始まる暁に
  煙と消えん一夜の祭り
  斑(むら)散る夢の雪遊び

      季語「ゆき」より

  ゆらゆら揺れて きらきら朝の
  衣吹く風に吹き混じる