2011年 日本画のあはひうたの御題について

「はるぬりゑ」の御題は万葉集の4139(巻十九)大伴家持
「春の園紅匂ふ桃の花下照る道に出で立つ娘子」

口語訳すると、「春の庭の、紅色の際立つ桃の花。その下の照り映える道に出で立つ少女よ」といったところでしょうか。
ところが実は、万葉集の題詞には「春苑の桃李の花を眺めて作る」とだけあり、「少女」は作者・家持の幻想の存在なのだそうです。

そんなことから、「春の幻想」をテーマに思いつくままに書いてみたのがこのうたです。
書いているうちに、いつの間にか「毎年春の景色に色をつけている人」の目にしている景色と、その歩んできた道のりの奥にある風景が、重層的に現れて来ました。

くるくる場面が転換し、かなり分かりにくい、拙いうたですが、万葉集から御題を取ってこの言葉遊びを始めたごく初期(恐らく一番最初)に書いたものではなかったかと存じます。

このうたに合わせて描いた日本画「うたうたひ」は、絵の力量の関係で、うたの「一場面」というより、そのほんの一部になってしまいました。けれど、先生や教室の皆さんの御助力でどうにか新春展への出品に漕ぎつけた、思い出深いものです。