2011年 日本画のあはひうた

      万葉集の4139(巻十九)大伴家持
「春の園紅匂ふ桃の花下照る道に出で立つ娘子」より

御題等について、詳しくは補記をご覧ください。

はるぬりゑ

  はみ出したとてゆるしませ
  瑠璃色黄色桜色
  のどかに揺れる川岸の
  その蒲公英の花の先
  野末の空の琥珀色

  暮れゆく町の公園で
  練習してるうたうたひ
  なづなの揺れる道端に
  ゐあはせた子の黒い眼と
  逃げた子犬の薄茶色
  ほかにも色は色々に
  筆を滴り塗り絵ぬる

  森で揺れてる二輪草
  木琴の音が何処からか
  野原をぬけてその花の
  はるかな夢を呼び醒ます
  鳴沢の水音に似て

  白いお花のその夢の
  谷水ぬるむ春の日に
  出会ふ人みな振り返る
  流浪の空のうたうたひ
  道々舞を舞ひ歌ふ
  散る花びらと夕風に
  匂ふ錦のその衣裳

  今も昔も春塗り絵
  出番来る度塗るのです
  楽しい春のこの景色
  月は朧に滲ませて
  をちかたの雲野辺の花
  とりとめもなく私が塗つた
  めしませ春のこの景色