2011年9月の御題について

「萩遊び」の御題は万葉集2173(巻十)
「白露を取らば消(け)ぬべしいざ子ども露に競(きほ)ひて萩の遊びせむ」

「秋雑歌」の中の「露を読む」と題詞された歌の一首です。「いざ子ども」は脚注によれば「宴席で目下の者に親しく呼びかける慣用句」とのことですので、口語訳すれば「白露を手にとったなら必ず消えてしまうだろう。皆の者、露と競って萩の遊びをしよう」といったところでしょうか。初めて目にした時、何か、楽しい謎かけを仕掛けられたような気がしました。

「露」の、一体何と「競ふ」というのでしょう……。
萩の花や葉との密着度でしょうか?美しさでしょうか?一夜で消えてしまうその儚さ、存在の短さでしょうか? あるいは、「このひとときを生きる」ということ?

それに、「萩の遊び」って何でしょう……。
多分、萩を見たり触れたりして楽しむということなのでしょうけれど、具体的にどんなことをするの(笑)?

まあ、何にしても、乏しい読書経験と私自身の体験から、「遊び」は心と命の浄化、魂のリニューアルではないかと思うのです。

お題が生まれたのは「宴の席」ということで、夕暮れ刻をイメージして、かつて少しの間住んだことのある町を思い出しながら書きました。
「招(を)く」は「まねく」、「ざやめく」は「ざわざわと音を立てる」、「銀輪」は「自転車」だそうです。


後日追記:
この歌を書いて暫くしてから、古典についての調べものを進めていて、「萩の遊び」とは萩を眺めながらの宴であること、昔の人は、露や霜に、季節の駒を進め、花を散らせたり木の葉を色づけたりする力があると信じていたらしいことを知りました。

「粟」は仲秋の季語です。五穀のひとつで、粟飯、粟餅などになります。