2011年12月の御題について

「夕鶴<ゆふづる>」の御題は万葉集271(巻三)高市黒人
「桜田へ鶴(たづ)鳴き渡る年魚市潟(あゆちがた)潮干(しほひ)にけらし鶴鳴き渡る」

多くの羇旅歌(きりょか)を残した高市黒人の歌で、「桜田」、「年魚市潟」は今の名古屋市南区の地名だそうです。口語訳すれば「桜田の空へ鶴が鳴き渡ってゆく。年魚市潟の潮が引いて干潟が現れていたらしい。鶴が鳴き渡ってゆく。」といったところでしょうか。飛びゆく鶴の姿や声に触れることは、旅先での魂振りだったのでしょう。

最近、ライブで応援しているアーティストさんのオリジナルラブソングを聴いて感動したり、他の方の恋の詩を読んでほろりとすることは多いのですが、自分で書きたくなるのは専ら命にまつわるうたです。きっと、今一番、関心が向いていることだからだと感じています。

このうたは、ただ「飛びたい」と思いながら書きました。先日見に行った丹頂を思い出しながら。

餌場へ、塒(ねぐら)へ、繁殖地へ、
鳥は命を費やして飛び、飛ぶことで命を繋ぎます。
飛ぶことは、生きること。
鳥たちから、飛ぶことが奪われませんように……。

「朽野(くだらの)」は「枯れ野」、「浪波(らうは)」は「波」、「辺つ風」は「海岸を吹く風」、「累世(るいせい)」は「代々」だそうです。

「綿」の御題は冬(三冬)の季語・「綿(わた)」。
生活にちなんだ季語で、着物に入れれば「綿入(わたいれ)」になります。

似ていますが、植物としての「棉(わた)」は仲秋の季語だそうです。