2011年12月のあはひうた

      万葉集271(巻三)高市黒人
「桜田へ鶴(たづ)鳴き渡る年魚市潟(あゆちがた)潮干(しほひ)にけらし鶴鳴き渡る」より

御題等について、詳しくは補記をご覧ください。

夕鶴<ゆふづる>

  珊瑚に染まる空の下
  朽野(くだらの)遠く翳(かげ)る先
  浪波(らうは)かすかにきらめいて
  誰か呼んでる気がします
  辺つ風吹き初める渚

  棚田に集ふ はらからよ
  頭上(づじやう)の風に乗る刻(とき)と
  鳴き交はしつつ羽ばたけば
  木守り揺れる里木立
  童遊び(わらはあそび)を見下ろして
  高くこの身は舞ひ上がる
  累世(るいせい)通ふ空の路(みち)

  飽かず命を費(つひ)やして
  夕風とらへ打ちおろす
  千代の族(うから)の営みを
  眼下の川となぞりつつ
  鶴(たづ)は干潟を目指します

  白い翼に風とらへ
  火照りとともに打ちおろす
  ひとたびごとに行く鶴は
  二度咲きの花見下ろして
  今日(けふ)の命を繋ぐ糧(かて)
  浪波の恵み目指します
  白い命を費やして

  田中より発ち羽ばたいて
  頭上の風をとらへては
  鳴き交はしつつ打ちおろし
  木守り揺れる里木立
  忘れ井(ゐ)の野を越えて行く
  鶴の我が頬 時が過ぎます
  累世通ふ空の路

      季語「綿」より

綿

  童(わらは)の冬の晴れ着の中で
  大切な日をふくらます