2011年1月のあはひうた

      万葉集2330(巻十)作者未詳
「妹がためほつ枝の梅を手折るとは下枝の露に濡れにけるかも」より

御題等について、詳しくは補記をご覧ください。

白梅想

  いつの世からか春隣
  森の外れに咲き香り
  楽の音時に聞こゆるを
  頼み微睡み居りました
  巡る月日に身をゆだね

  秀(ほ)つ枝しづ枝に受くる陽(ひ)の
  露を帯びては花と化す
  縁(えにし)の季節(とき)の暁(あかとき)に
  野道を人が訪ね来て
  腕を我が枝にかけました
  瞳(め)の輝きに見入るなへ
  男心は溢れ来る

  手折る秀つ枝のその花は
  愛(を)しき をみなに贈る花
  瑠璃の裳の紐解く宵に
  取る指先の薄紅は
  はららく白に匂はむと

  しづ枝に寄りて身を反らし
  頭上へ延べたその腕で
  枝手折るとき その人の
  残す痛みと引き換へに
  露で袂を濡らします
  夢と儚き命ゆゑ
  憎む心も湧かなくて

  濡れて輝く花の枝(え)を
  恋情ゆゑに折りし人
  匂(にほ)え少女(をとめ)にその花と
  今日の命を預けませ
  瑠璃の裳の紐解く夜を
  重ねてはまた花咲く頃に
  森の外れを訪ね来よ

      季語「雪鳥」より

雪鳥

  雪降る森に生きてます
  昨日食べたよ ななかまど
  どきどき脈を打つ心臓で
  凛と冷たい空に舞ふ