2012年4月のあはひうた

      万葉集925(巻六)山部赤人
「ぬばたまの夜の更けゆけば久木(ひさぎ)生(お)ふる清き川原に千鳥しば鳴く」より

御題等について、詳しくは補記をご覧ください。

清流<せいりう>

  濡れ石の面(も)に ふうはりと
  望(ばう)の月影射し初めて
  瀧の轟(とどろ)き聞こえます
  真木生ひ茂る山間(やまあひ)に
  残る隈なく谺(こだま)して

  宵の木末(こぬれ)をゆく鳥は
  喉(のみと)を開き歌ひます
  双葉と萌える和草(にこぐさ)の
  けぶる川原に久木生(お)ひ
  往(ゆ)く川浪(かはなみ)も土の香(か)も
  今日(けふ)の命をはらみます
  望の月影 柔(やは)らかく

  久しく森に住みたまひ
  囁きかける御霊(みたま)たち
  玉(ぎよく)を宿せる川浪に
  生ひ茂らんとする若葉
  更けゆくままに鳥は鳴き
  瑠璃(るり)のお空に朧ろ月

  清らな声(こゑ)の重なりは
  夜の木末に纏(まと)ひつつ
  木々の間(あはひ)を移りゆき
  彼方に黒き山影の
  果てまで統(す)べる御霊たち
  羅(ら)の月影を ふうはりと
  庭(には)となす世に掛けたまふ

  近く遠くの鳥の歌
  嫩葉(どんえふ)の間(ま)を移りゆく
  両岸(りやうぎし)の木の間(あはひ)より
  白浪立てて ゆく川に
  望の月影 掛かります
  流れる水(みづ)は命をはらみ
  草吹く風と遊びます

      縁起物「招き猫」より

まねきねこ

  真似しないでよ してないよ
  猫が二匹で向かひ合ひ
  きみは左手 ぼく右手
  猫に小判と言ひっこなしよ
  こつちへおいで 福の神